対象者 | 交通事故による障害者(51歳) |
---|---|
依頼調査 | 尾行調査 |
概要
その男の演技は完ぺきだった。
最近まである中堅企業で部長をやっていたが、51歳でリストラに遭って離婚。
その直後、交通事故で重度の障害を負い、車イスの生活を余儀なくされてしまった。弱り目にたたり目とはこのこと。
とはいえ、退職金と合わせてかなり高額の保険金が下りたので、当面の生活には困らない。
自宅に引きこもり続けていたある日、彼は訪ねてきた元部下のOLに車イスを押してもらい、近所の公園に散歩に出た。
どこから見ても、抜け殻になった中年男の悲哀が漂っている。
公園で遊ぶ幼い子供たちを目で追いながらたばこをくわえようとした瞬間、彼の手元からたばこがぽろり。
彼は当たり前のように車イスから立ち上がり、たばこをひょいと拾い上げる。
その場面をカメラに収め、私の仕事は終わった。
依頼者はある保険会社の調査担当者。
歩けないほどの「重度の障害」に疑問があるという調査依頼だった。
突っ込んで調べたら、彼を診断した医師は彼の中学時代の同級生と判明。
訪ねてきたOLは、すべてを知っている彼の愛人だった。
その後、彼が保険会社に訴えられたとは聞いてない。